相続トラブル事例
相続トラブル事例
相続はなぜトラブル(争続)に発展するのか?
事前に効力のある遺言を残しておければ良いのですが、そうではないケースも多々あります。その場合は、お亡くなりになった方のご家族など相続人の方々が「遺産分割協議」をされ、残された資産(不動産やお金など)の分け方を決めます。
トラブルになるのは財産がさほど多くない場合です
- 平成22年度の「司法統計年報」によると、遺産相続争いを起こした方の財産別の統計が載っていますが、「調停で争っている方の資産状況は5000万円以下の方が全体の7割以上」をしめている状況です。
- 不動産(自宅)のみがあり、現金があまりない場合に世帯主(夫)が亡くなり、「法定相続分どおり妻と子供2名に財産を分けるには家を売るしかない」というケースで争いに発展するケースが多いです。
- また1000万以下での件数も3割を占めており300万円の現金の分け方でも「争族」になってしまう現状といえます。
なぜ相続争いが増えて来たのか?
- 以前の日本社会は、長男を相続人として全ての財産を継がせる制度でしたが、60年程前に「均分相続制」となり兄弟姉妹の権利は平等になりました。
- そうすると、残された兄弟姉妹に関して「法定相続の割合」は等しい物となります。よって、兄弟姉妹のうち「親の介護をしていた方」と、例えば「都会に出て暮らしていた方」にも法定相続割合は等しいです。
- そのため、「平等に分けることに気持ち的なしこりが残る」ことで争いに発展しがちです。また、残された財産のうち不動産(家)が大半を占める場合、どうわけるかという場合も兄弟姉妹間で争いに発展しがちです。
- このようなトラブルも「遺言は法定相続分に勝る」ため、遺言さえあれば避けられたケースと考えられます。
相続トラブル事例
ケース1:不動産しか主な相続対象がないケース
- 長男Aさんと次男Bさんがいます。すでに数年前にお父様は亡くなりましたが、このたびお母様が亡くなり、遺産の分割をすることになりました。
- 相続財産は「不動産(家)5000万円」と「現金が200万円」です。
家のリフォーム代などは、母の生前から長男Aさんが支払うなどし、その額は1000万円を超えていました。また、Bさんは実家を出ており、母の面倒もAさんが見ていたので、遺言は残されていなかったものの自身が家をもらうことに疑いはありませんでした。
- 母の死後、Bさんより「実家は自分にも半分の権利がある。相続登記をしてほしい。」という遺産分割調停の呼び出しがありました。それがかなわない場合、1階部分にBさん家族が住みたいということでした。
- Aさんは、家は自分のものとしたかったため、代償分割(不動産の代わりに金銭で代償)を選び、2000万円借入のローンを組んで、代償金としてBさんに支払いました。
ケース2:遺留分を侵害する遺言があった場合
- 長女Cさんと長男Dさんがおり、父親が「1000万円の財産(家700万+現金300万円)はすべてCに託す」という公正証書遺言を残しました。ただし、負担つきの相続であり、「地方にある先祖のお墓を守ること」が条件となっていました。
- この遺言はDさんの遺留分(法律で定められた最低限の取り分)を考慮していないので、Dさんは全体の4分の1である250万円の取り分を主張することができます。
- ただし、Cさんは都内に住んでおり地方のお墓を守ることが出来ないため、話し合いの結果Dさんに家(700万円)を相続してもらいました。
Cさん自身は、本来はDさんの遺留分250万円を除いた750万を相続できるはずなのですが、Dさんにあまり貯金がないこと、家を売ってしまうとそもそもお墓を守れないこと等を考慮し、Dさんから代償金として現金300万を支払ってもらい、父親が残した現金と合計して600万円の相続となりました。
- 遺留分を侵害する場合に、どのような分け方をされるかまで考慮しないと、ご自身の意志に沿った結果にはなりにくいといえます。